2024年5月5日日曜日

家系ラーメン王道 @杉田

横浜市磯子区・杉田といえば, ラーメンの一大ジャンル「横浜家系」の元祖「吉村家」がかつて営業していた家系ラーメン発祥の地, いわば聖地です. 1999年, 吉村家が横浜駅前の一等地に移転した後も, この地を中心とした横浜駅以南には綺羅星の如く輝く家系の名店が数多くあります. 過去にご紹介した金八家はまさに綺羅星の一つですが, それに優るとも劣らぬ実力店がこちら, 通称・横浜王道.

家系ラーメンの保守本流, 吉村家やその直系店が赤であるのに対して, 王道家グループのイメージカラーはビビッドな黄色.

最初に申し上げておきますが立地はさほどよくなく, 京急線の杉田駅から1.8 kmなので歩くと20分はかかります. 本学八景キャンパスからは5.2 km. 当然徒歩は厳しいですが, 起伏のない道なので自転車があれば行きやすいかと. 駐車場があるので車もOK.

さてこちら, 横浜家系の歴史に深く関わる重要な店です. 家系の始祖であり吉村家の創業社長でもあった吉村実氏は, 300人ともいわれる大勢の弟子を育てました. そんな吉村家の修業はあまりに過酷で, 吉村家が世間で広く認知され始めた1990年代にテレビでしばしば取り上げられたほど. 当時の映像のいくつかはYouTubeで視聴できますが, 吉村社長の言動は現代のコンプライアンス基準ではかなり不適切であり, 今改めて見るとなかなか面白いです. (テレビなので過剰演出, いわゆるヤラセもあったようですが😅)

そんな大勢の弟子たちの中でも, 厳しい修行に耐えてその腕を吉村社長に認められた4人の高弟は家系四天王と呼ばれ, それぞれ吉村家直系店を任される一級の職人でした.

  • 鶴巻孝平・環2家 (横浜・下永谷)
  • 津村進・杉田家 (横浜・杉田)
  • 小沢肇・はじめ家 (富山県魚津市)
  • 清水裕正・王道家 (千葉県柏市)

YouTubeを探すと, テレビに四天王が登場するシーンがあります(10:30). 別の直系店, まつり家(2015年閉店)のオープン前後なので, おそらく2003年か2004年の放送. ちなみにこの動画も(サービス精神旺盛な吉村社長の過剰演出はあったかもしれませんが😂)めっぽう面白いです. 思えば昔のテレビは, 制作側に意欲や野心が溢れていて面白い番組が多かった….

前置きが長くなりましたが, そんな家系四天王の一人, 鶴巻氏が環2家の店長を15年務めた後, 2015年に吉村家直系を離れて始めた店がこの横浜王道です.

 
店内撮影禁止のため店の写真は外観のみ

紛れもない家系の名人, 鶴巻氏が吉村家から破門され, それに先立つ2011年に同じく破門されたもう一人の四天王, 清水氏の王道家グループに加わった経緯は複雑です. 何せ清水氏にとって鶴巻氏は, 環2家時代に指導を受けた兄弟子なので. 鶴巻氏の破門について, 師匠の吉村氏はインタビューで「従業員のイジメ」と語っていますが, 王道家の清水氏はブログで「自家製麺」と「人材育成」を理由に挙げています.

王道家の清水氏は最初から独立志向で, 王道家を自分で立ち上げたのに対して, 鶴巻氏の環2家は吉村家の支店という位置づけだった. よって清水氏は破門されても王道家を存続できたのに対して, 環2家の雇われ店長だった鶴巻氏は破門されて居場所がなくなったと. 弟弟子が経営する王道家グループに入る鶴巻氏の心境は複雑だったかもしれませんが, 2017年のインタビューでは「念願だった自分の店」という言葉もあり, 幸せな職人人生を歩んでおられるのでしょう. ちなみに冒頭の動画に若き日の鶴巻氏がいます(3:00). 師匠の吉村氏を親父と呼んで慕う, 根っからのラーメン職人.

吉村家とその派生店(本牧家, 六角家, etc.)には, カリスマ・吉村氏を頂点とする厳しい徒弟制度があり, そのカリスマの強烈な個性ゆえなのか, しばしばこうした仁義なき戦いが勃発しているのも有名な話で(他にも本牧家 vs. 環2家とか, 六角家 vs. 末廣家とか). かつて吉村家とともに家系御三家と呼ばれた六角家と本牧家がそれぞれ2020年と2023年に姿を消しているのがすごい.

前置きが続いてしまいましたが, こちらが横浜王道のラーメン870円(かため) + ライス並150円.

濃厚豚骨にエッジの効いた醤油だれが加わった褐色のスープ, そして表面に浮かぶ黄色い鶏油(チー油).

この色調, 食べなくても見ただけでわかる絶対ウマいやつ. (笑)

醤油をシャープに効かせたスープは直系を思わせる. 本家と比べるとちょっとマイルドな感じかな? しかし豚骨の出汁はしっかり出ていて高濃度で強いスープ(豚ガラを大量に使うのが吉村社長の教え). いわゆるライト家系ではまったくありません.

王道家グループは自家製麺(酒井製麺を使わないと言って王道家は吉村社長に破門された). 酒井の麺との違いは私にはわかりません. 家系らしい美味しい麺です.

チャーシューは軽くスモークされたロース肉. 香りよくこれも直系イズムを感じさせる.

よくできた家系ラーメンは立派なご飯のおかず. ライスは必須アイテムです. 海苔, チャーシュー, 卓上の刻みしょうが(王道家オリジナル)などを駆使してミニ丼を製作. コアな家系ファンの中にはこれを邪道と言う人もいますが, 私はやめられません😎

さすが人気店で, 昼時を少し外したくらい(13:30頃)ではまだ店内に行列が. とはいえ店内は広く, カウンター席の他にテーブル席も多数で回転は速い. 客層はラヲタ的な男性が多いわけではなく, 週末だと近隣の家族連れがテーブル席を使うパターンが多い印象. スープが若干マイルドに感じたのは, 幅広い客層に喜ばれるスタイルを追求した結果なのかもしれません. そうだとすると, 至極正しいラーメン屋の姿だと思います. まさに守破離. 求道者はかくありたいものです.

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